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うちに泊まりに来た友人が撮ってくれた写真がとてもきれいで、おもわずFBとブログのトップ画像に設定した。なんだか自分が好きなもの、大切にしたいことがくっきり写っている気がして。

眼下に望む甲府盆地の夜景は、東京から勝沼に来るときにトンネルを抜けると広がる光景で、本当に大好きな景色だ。青空の下の広々とした景色も好きなのだけれど、このきらきらの散りばめられ方になんともキュンとする。

中学生のときに初めて読んだ『君たちはどう生きるか』のなかに、主人公コペル君がビルの上かどこかから下を見渡して、アリのように小さく見える人々それぞれに、自分が感じているような悲喜こもごもや「人生」があるのだと「発見」する場面があったように思う。自分以外の人生を実感することはできないけれど、世界には切実な人生が数え切れないほどある。甲府盆地の灯を見ると、なぜかよくそのことを思い出す。

家から漏れる灯というのも、いいものだ。とくに人家の少ない地域ではこの「灯」は重要な意味を持つ。前職の先輩後輩夫婦で、新潟県で「たましぎ農園」を営む鴫谷さんのブログのタイトルは「11軒目に灯がともり」。そこに暮らすようになって数年、夫婦のもとに生まれてきた赤ちゃんは、その集落で34年ぶりの新生児だったそうだ。

30年前、当時2歳だった私は、家族とともに東京から宮城の山の中に引っ越し、子ども時代をそこで暮らした。もちろん私の記憶はないけれど、都会っ子の母が、今の私と同じくらいの年齢で3人の子どもを連れてやってきたところを想像すると、なんだかぐっときてしまう。

少し前に当時のことを聞いたら、近所へのあいさつまわりのなかで、「あそこに家の灯がともるのが嬉しい」と言われて、勇気付けれたことを話してくれた。うちは、人家がまばらな細長い集落の入り口にある。夜、暗闇に包まれる田舎の家の灯は特別なあかりなのだと思う。


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